MM編集部とその周辺。
スポーツライター梅田香子の日常を日本語でメモ代わりに綴ったものです。

東大とウナギと父の思いで

 誕生日だったので、夫がめずらしく花を買ってくれました。
 ちょっと思うところがあって、鰻を食べにいきました。

 おいしかったです。
 何年ぶりかな。

 亡くなった父のことをたくさん思い出しました。
 山口県徳山出身。

 父の母は病気で戦争中に亡くなり、戦後は後妻がきました。沖縄戦で前夫は戦死。元連隊長夫人だったので、家事はできません。私の父を含む継子たちともうまくいかず、祖父はかなり迷ったようです。が、10年目に入籍しました。

 父は東京大学を2度受けた(これが自慢だった!)後、山口大学を卒業してサラリーマンになりました。1つめか2つめの会社が岸信介の息子の経営だったらしい。何度か転職していました。

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 私が生まれる前、両親にとって登戸での借家時代、生後10か月の長男(私の兄)を亡くしたことが人生最大の悲しみでした。近所の町医者の誤診が原因で、風邪から肺炎をおこし、慈恵大病院にかけこんだときはもう手遅れでした。

 その反動で、父の医者嫌いはほとんど病的で、めったに病院には行かせてもらっていません。学校での予防接種も断っていました。ただ中耳炎のことはすごく怖がり、耳鼻科にはすぐ行かせてくれました。
 なんでも慈恵大病院では隣のベッドで幼い子が中耳炎をこじらせて臨終を迎え、医者の手が足りないまま、半日後に兄も息をひきとったそうです。
 父も母も子どもが死ぬドラマや映画が嫌いで、「風と共に去りぬ」も「ほたるの墓」も一度は見ても2度めは見ようとしませんでした。

 後年、私が娘の自閉症をなんとかしたくて、医者をさがしていたときも父にはさんざんジャマされました。「おまえは自分の子供を障害者扱いするのか!」と言って、受け入れてくれませんでした。なので、私は福岡でさがしたのです。

 父は私のスポーツライター業にも大大大反対でした。出産直後も「東京中日スポーツ」に署名原稿がのっているので、激怒して長文のファクスで、「赤ん坊が孤独死する話」という名作をおくってきたりもしました。

 それなのに私に隠れてこそこそと、私の名前を使って新聞各紙に投書したりしていたのです。パソコンなんてまだ普及していない時代です。新聞社側も途中で「どうもおかしい」と気がつき、父の名が各社のブラックリストに載っていたことが後に発覚しました。

 それには私が「親子の縁を切る」と激怒。

 ともかく昔から私が何かをやろうとして、「がんばれ」と親に行ってもらったことがありません。とりあえず反対するのです。なので、自分の子がやろうとすることは応援することにしています。

 父は健康診断も人間ドッグも断固として行かず、「ハブ茶を普段から飲んで、鰻を食べていたら癌にはならない」と信じ込んでいて、たまの外食はいつも鰻でした。
 
「乾布摩擦をして、鰻を食べさせたら、自閉症がなおるかも」と言って、私の次女のことはそれはもう溺愛してくれました。。

 70代で末期のすい臓がんが告知された瞬間、父はがくっと肩をおとしました。無言ですっと黙って立ち上がり、次女のことをぎゅっと抱きしめてくれました。

 あの子は重度の自閉症児なので、なかなかやさしくしてくれるお年寄りがいません。姑なんて最初のも2度めのも次女にはひどかった。

 なので、あのときの父の姿を思い出すと、私はなんだかやさしい気持ちになれるのです。

 さほど苦しむことなく、亡き兄のもとへの旅立ちました。

 母は「あんなに健康に気をつけていた人が癌になるなんて、かわいそうに」と言っていました。
 でも、父が健康に気をつけたって、ハブ茶と鰻です。胃カメラも何も経験したことがありません。

 なんとなく私はハブ茶と鰻に八つ当たりして、その後は一度も鰻を食べていなかったのです。ハブ茶も飲んでいません。ウーロン茶をいつも飲んでいます。

 「鰻よ、食べても父は癌になったじゃないの」という思いかな。鰻には迷惑な話ですね。なんだか鰻と会ったら、因縁つけてしまいそうで、遠ざかっていました。

 今回は夫が「誕生日、どこに行きたい?いつもの店は日曜だから休みだなあ。」と聞いてくれたので、「鰻やさん」と答えました。

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 日曜出勤がつづいている夫のことが心配だったので、鰻がいいかな、と思ったのです。
 「だいたい鰻なんて買うものじゃなく、釣ってくるものやで」とも言っていましたが、久しぶりに日曜日、休んでくれました。

 健康は鰻だのみ。気がつくと父と同じことをしているのでした。

 ばいなう。

 

P.S.下で紹介している青木富貴子著”「風と共に去りぬ」のアメリカ”はすごく面白かったです。森瑶子さん翻訳の続編、高くなっちゃいましたね。