つづきです。2008年、福留孝介がシカゴカブスに私は入団しました。
これは野球シーズン中、ほとんど日本には帰ってこれないことを意味します。(まあ、その前も井口資仁がいたので、同じようなものでした)
次女は両親に託し、香椎小学校の特学に通いつづけました。
私は長女だけシカゴに連れて行って、元の学校に行かせたりもしたのです。
福留の入団記者会見のときは、そばにいました。
ところが、じきに長女はシカゴで学校に行きたがらなくなりました。わりと勉強できるほうだったのに、すっかり遅れをとってしまったからです。
まあ、いいや。シカゴでも朝からフィギュアスケートやらせておこう。
幸か不幸か、長女のまわりに学校に行っていない友だちがたくさんいました。
公認本に書かれているから、かまわないと思いますが、某選手は小学校は7日ぐらいしか通っていません。
あそこまで才能なくても、レッスン時間はかぎられています。昼間からスケート場にいる子たちはわりといるのです。
これはアメリカでも日本でも同じ。
私はたくさんアスリートを見てきたので、全員が同じ生き方、同じ学校生活、同じ受験勉強をするべきなんて、まったく考えたことはありません。
野球とアメフトでプロだったボー・ジャクソンの親が、いつも言い聞かせていた言葉です。
「お金は使えば使うほどなくなってしまうけれど、インテリジェンスは使えば使うほど増える」
長野五輪の金メダリスト、タラ・リピンスキーがホームにしていたデトロイトのスケートリンクでは、今でも多くのスケート選手がホームスクーラーです。
そのせいか、あそこは今でもホームスクーラーが多いのです。3面リンクがあるスケート場なので、トゥーター(家庭教師)を雇ってホームスクーリングの宿題をこなしています。
通信制というのは甘くなく、テストに合格しないと進級できません。
長女はミシェル・クワンの自伝でも有名なホームスクールをとっていました。が、これがまたむずかしいの、なんの。
英語で物理なんて正直、学のない私では教えることができません。そういうレベルの家庭教師を福岡でみつけられるかどうか、八方ふさがり。
そこで浅智恵というか、悪智恵というか、苦肉の策といいますか。他にあのとき選択肢がありませんでした。
というのも、こういうことです。
日本は中学までは義務教育なので、不登校でもなんでも卒業証書はもらえます。
なので、最後の3か月だけ、日本の公立中学に入れてしまえ!
案の定、東区役所いって手続きしたら、露骨に嫌な顔をされました。「え、今もう12月ですよ。」
でも、福岡で家を買って固定資産税も住民税も払っているのだから、拒否はできません。←と粘っこくおしまくりました。
香住ケ丘中学のほうも戸惑ったようです。
ほぼ毎日夜8時ぐらい、ざわざわとした職員室から電話がかかってきたので、教員というのは大変な職業だと思いました。
とくにこの時期、中学受験に向けての対策と内申書を書くことで、相当に忙しくされていたようです。
次から次への長女はよく問題を起こしてくれたものです。ほとんどが言葉の壁から来るものでした。
たとえば、アメリカは小学生でも化粧していく子が多く、初日から長女はマニュキュアまでしていったそうです。
「化粧はやめましょうね」
と担任の先生に言われても、なかなかやめません。数日してわかったこと、
「ママ、もしかして化粧ってmake upのこと?知らなかったもーん」
そうなのでした。化粧という言葉、それと博多弁、あとゆっくり話してもらわないと日本語が理解できません。
得意なはずの英語も、この頃はへんな点数をとってきました。疑問文と肯定文という漢字が読めなかったそうです。あのなー!(英検1級は高校になってすぐ受けたら、受かりました。あたりまえですが)
ちょうど長女は福岡代表の国体代表に選ばれていました。スケートの練習だったら、一応は出席日数にひびかないことになりました。(今はどうか知りません)
なので中学卒業のほうは問題なさそう。あとは高校進学をどうするか、です。
県立に行ってほしいのは山々ですが、試験に合格できるどうか。普通入試ならまず問題文が読めません。そこで推薦入試を考えましたが、これも見事に落ちました。まあ、受かるわけもないか。でも、定員に足りないのだから・・・ねぇ。
もう頭の血管が破裂してしまいそうなほど悩みました。
困り果ててしまったとき、助けてくれたのが私の原点!中日ドラゴンズでした。
燃えよドラゴンズ!88(ちなみにこの動画のCBCアナ、久野誠アナウンサーとは20年以上、大リーグレポートをやらせていただきました)
星野監督のマネージャーが福岡出身なので、ちょこちょこ会ってラーメンスタジアムに行ったりしていました。その方が「高校進学?オレにまかせろ!」と言ってくださったのです。
「ドラゴンズの枠で入れてやる」
「え!うちの子、女ですよ」
「入学したら女だから、野球じゃなくてフィギュアスケートということにしたらいいから」と。
そして、本当にすぐ話をつけてくれました。うそみたいなホントの話。
「え~、私、日本の高校に行けるの?インターハイとかでれる?ママ!ありがとう!」
ばいなう~