田辺聖子先生が亡くなってしまいました。小説もエッセイも好きで、ほとんど全作品を読破していたのですが。とくに「言い寄る」「私的生活」「苺をつぶしながら」は文庫がぼろぼろになってしまいました。
気にいった本を繰り返し読むほうなので、私はあまり新しい小説を読んでいません。
直木賞ものぐらいはおさえておきたい。読むとやっぱり「おお!」と面白いです。「下町ロケット」シリーズとか最高。(いつも世間の流行から遅れをとっています)
最近たまたま飛行機で読むものがほしくて、買ったのはこの垣谷美羽著「老後の資金がありません」。
表紙の絵がなんだかかわいくて、読みやすそうだったから。
買って正解。文章、すごく軽妙で、リズムがあります。実話なのかフィクションかのかわからないけれど、しっかり取材したのか、なかなかのリアリティ。
主人公は共稼ぎの主婦で、子供2人、私大を卒業させたところ。マンションのローンがもうじき終わりそうで、老後のための貯金は1200万円。リアルでしょ~
ところが、長女の結婚式に600万円かかり、新婚旅行やらなんやらでを折半。
貯金から500万円が消えます。
うそやろ~と言いたいところですが、お相手が岐阜の方と聞いて納得!
さらに夫は長男で、父親の葬儀とお墓で400万円。
1200万円の貯金が300万円を切ってしまいます。
折りも折、夫の会社がリーマンのあおりで傾き、退職金なしの解雇。
主人公も派遣の契約を切られてしまいます。
なのに、どのページもなんだか「おかしみ」にあふれ、暗い物語ではありません。
発想の転換を余儀なくされた主人公は、いろんな工夫でピンチをのりきっていくのです。
お年寄りを使った詐欺の片棒をかつぐ場面もありますので、まねしないように。
主人公はいつも自分のことより、子供たちのことをいちばんに気づかっているあたり、とても好感もてます。
私は思うのです。子供たちが健康に育ち、ひきこもりとかではなく、地味でもちゃんと働きつづけてくれたら・・・。
それはもう親としてはオリンピックの金メダルみたいなもの。
家族って力をあわせたら、いろんな困難を乗り越えることができる最強の民間保険だと思います。
ただ民間保険と違ってその逆、てんでばらばらになって爆発してしまう可能性もありますけどね。
小説の最後のほう、心がこもったお金のかからない葬式はとても参考になりました。この本はブックオフにはもっていかず、保管しておこう。えへへ。
ばいなう。