私の子たちは二重国籍で、今のパパは戸籍上は養父になります。
大坂なおみ選手はともかくチャーミングなので、スポーツに関心がない夫も「えらく、かわいい子がでてきたものだなぁ!」と応援しています。
内心は二重国籍に無関心ではない、というのもあると思います。もともとブラックミュージック好き、映画も邦画しかみません。大坂なおみ選手のファンはこういうタイプが多いようで、あまりスポーツに関心なかった人たちも惹きつけているようです。
54歳までずっと平凡な愛媛県人、棟梁大工として生きてきたのに、私と出会ったことで、いきなり二重国籍児のパパに。そのことでグリーンカードを取得できると知ったのは、ごく最近のこと。
それはもう、いろんなカルチャーショック&事件がありました。姑が老衰で自宅死したとき、刑事さんが家族構成を聞いて、あきれはてたほど。
10年前、知り合ったとき、夫はすでに調停離婚して10年め、私は前の週に調停離婚したばかり。
大正生まれの姑と2人暮らし。前の奥さんは近くの実家に住んでいて、4人の子供はそちらに住んでいました。ときどきバーベキューとか、うちに来たし、長男は社員なので結婚するまで、三食うちで私がつくったものを食べ、お弁当ももたせていました。
養育費とは別に学費、その他いろいろ、経済的な負担はすべて払っていたので、税務上は扶養です。つまり元の家族全員、自分の母親、それと私たち3人。
昔気質の夫はいろいろ複雑な思いがあるらしく、私の収入を聞いたことがありません。出張が入ると「ふーん」という感じ。
もともと旧姓で仕事をしていたので、郵便配達は混乱してしまい、何度も苗字のことを確認されました。悪いことに愛媛では多い名字で、すぐ近所にもいらっしゃるのです。混乱しているようなので、ポストに貼っておきました。英語でも届くので、「このうちは外国人がいらっしゃるんですかぁ?」とか。はい、二重国籍がいますよ。
姑も若いとき離婚したので、苗字が違うし、年金はないし、テレフォンショッピング好きで、二部屋が天井までうまっていました。長男の夫が当たり前のように養い、中学の頃から新聞配達やら墓堀りやらバイトしていたようです。
私は一応は東京育ちなのですが、アメリカ暮らしのほうが長く、クリスティ・ヤマグチとかダン・ワカマツとか長洲未来とか、今まで日系アメリカ人の存在は気になり、何度も取材してきました。血のつながりとは不思議なもので、やりやすかったというのも本音です。
なので、二重国籍のことになると、必要以上にかっかしてしまう部分があります。大坂なおみ関連の社説とか、コラムとか、ついつい他人ごととは思えません。
が、フィギュアスケートの新女王、アリサ・リュウの記事には心が溶けてしまうような清涼感を覚えました。以下はザ・マーキュリー・ニュースからの引用です。
「私は他の子とちょっと違うところが好きです」
小さいときから自分が他の子と違うことに気がついていました。
(そりゃそうです。
アメリカは離婚家庭が多く、2人のママがパパをはさんで、スケートの試合を観戦するのは珍しくありません。
でも、5人の子供をもつシングル・ファーザーは珍しいと思います)
アリサには妹と三つ子の弟2人と妹がいます。
「ダディ・なぜ私は外見が違うの?私は中国人ぽくない」
彼女が10歳になったとき、父親はついに説明します。
「きみにはバイオロジカルな母と、サロゲートな母がいるんだよ」
このバイオロジカルという英語は子供でもよく使います。「生物学的な」という意味で、私でも、19年結婚していた前の夫のことは「バイオロジカル・ファザー」と普通に言います。生物学的には親かもしれませんが、子供たちに何もしていませんからね。サロゲートはいわゆる代理母のことを言います。
アリサの父親は中国から移民で、1989年の天安門事件の後、中国を去りました。それまでは中国の南西部の大学で英語を教えていたそうです。
今も彼の家族は四川省の重慶で暮らしています。
カルフォルニア大学で勉強して、弁護士になって5人の子供を育てる。
なんかもう素晴らしいと思いませんか。アリサが中国系なのかどうか、そんなことはどうでもいいという気持ちになります。
はっきりしているのは、アリサはアメリカで生まれ育ち、ゴージャスな才能の加えて、日々の努力を積み重ね、全力で生きているということ。
戦前、稲田悦子先生の時代は日本人でもヨーロッパ選手権に出場することができました。それで誰にも迷惑はかからなかつた。
国籍なんてものは結局、法律上の手つづきにすぎない、一部の大人だけがごちゃごちゃ知りもしないのに、勝手なことを口にしているだけなのかもしれません。